ボイトレ山8合目キャンプ第4話
8合目を過ぎると空気もかなり薄くなるね。しっかり息を整えながらスローモーション動作で構わないからね。
今回はBincoのザックからジャイロスコープの原型のようなコマを出してごらん。この器具は様々な所で重宝されているから、ミニ知識の引き出しに入れて置くといいよ。
この器具の仕組みは、コマ回しのコマと同じ原理で出来ている。
コマが勢いよく回っているとコマの軸はほぼ垂直に保っている。この原理を使って軸の両端を自由に移動出来るようにしておくと、回転を与えている限り重力方向に立とうとするので、飛行機や宇宙船の重力方向が確認できる。今では、スマホにも使われていて画面の傾きをチェックしてくれるんだ。
それじゃ登りながら、その効果を説明するね。
N「人間の声帯は左右から筋肉で挟まれて出来たスキマが息の通り道となる。左右の筋肉は、それぞれがコマの本体に相当する。その2つのコマの軸は左右から身体の背骨の延長線の方向に貫いている共通の軸なんだ。
その左右のコマを、左右から押して合体させると、柔軟な筋肉ゴマが出来上がる」
B「この左右2つのコマをそっくり腹部に移すとコマ型腹式呼吸が始まるって訳ね。面白そうね」
N「実際のコマは回しひものようなヒモで回転させているけど、腹式コマでは、息の出し入れが回転に働きかけるエネルギーとなる。同時に2つの間のコマのスキマは、最大吸引時に限りなく真空状態に近づくよね。即ち、2つのコマを一体化して1つのコマに仕上げる事が呼吸能力を高める事になるんだよね」
B「そうすると、腹式呼吸では吸引時に縦のスキマが真空化されて、左右の筋肉がぎゅっと締め込まれる訳ね。この締め込み感が強い程ボイトレ山の高みに登れるって事ね」
N「そのぎゅっと感、大きな武器となるから忘れないでね。8合目以上では、忘れると事故に会うかもね。但し、筋力ではなく呼吸力にこだわってね。その事に慣れるまで練習有るのみだからね」
B「かなり険しい雰囲気に成って来たわね。息でお腹のコマ回しながら真空シートを作り上げるのよね。息をそんな風に使うなんて面白そうだわ。老化対策にも役立ちそうだしね」
N「ちょっとここで、コーヒーブレークしながら数学遊びしてみよう。半径rの背骨を使って円を描いてみると円周2πrの弧が出来るよね。背骨rは息の通り道(すごく細いストロー)と見なすと分かり易いかもね。
rの中心点側から息を吸ったり吐いたりすると動作の的づくりが単純化出来るので試してみてね。
コンパスで描かれる線は息の通り道と考えると呼吸の仕組みが整理し易くなるよね。立体であるコマ(3次元)がくっついて薄いスキマの面の円(2次元のπr2)を作り出す。そして、息の操作がコマの軸である線(1次元の線分)に働きかけてコマの回転の中心になるっていう思考回路を作っておこうね」
B「やっぱり数学は役に立つのね。私苦手だけど、円の面積くらい迄なら付いて行けるわ。息の出し入れがストローのような物で出来れば分かり易いかもね。お腹の中に数学が入ってくるのは生まれて初めてだけど、スッキリ整理できそうね」
N「ボイトレ山も9合目に迫ってくると、数学は必需品だよね。浮かんでいる雲・流れる雲・渦巻く雲・厳しい風雨・雷鳴・・・等のような発声の仲間たちは、数学のお世話になっているからね。」