ボイトレ山9合目キャンプ第2話
9合目での風は平地では見られない強いレベルで吹き荒れるからね。今回は風の強さに焦点をあてて登頂を始めよう。
ボイトレ山9合目の風力を高めるためには、呼吸の原理を初心に帰って見直してみよう。
N「呼吸システムの最もシンプルな原理である球体呼吸を、もう一度おさらいしておこうね。
先ず、球体の中心点は「息の吸い込み口」である事を確認しておこう。
この中心点から息を吸い込んだ結果、球体表面は膨張力が働くよね。逆に球体表面へなんらかの微細な穴が開けられると、その穴から息が放出する。この息の吐き出しを脱力しながら行う事で、発声が行われる訳だね。難度の高い技術だけど9合目の試練だと思って楽しんでね」
B「この球体呼吸を腹部の筋肉群を使ってやるんでしょ?胸部・のど・頭部・・・等は一切無視していいのかしら?」
N「取り敢えず腹部筋肉の丸い塊をイメージしてやって見るといいよ。先ず中心点から息を吸い込んでみると、丸い筋肉の塊はパンパンに膨張するよね。これが腹式呼吸の第1段階となる。
この強い膨張状態をそのままにしておいて、球体の表面膜に言葉の刺激を与えると、その刺激により開けられた微細な穴から息が吹き出し声に変化するんだね。
難度が高いけど練習により段々強い風をコントロールできるようになるぞ」
B「どうして、この操作を胸部でやってはいけないのかしら?」
N「根本的な疑問だよね。ここでしっかり脳の整理をしておこうね。
一言で言うと分子密度の違いかな。
腹部内は多量の筋肉細胞のお陰で、吸い込む少量の息で膨張が効果的に行われるよね。この時、各筋肉細胞には押しつぶされるような力が働きスキマがふさがり吸い込んだ息を逃がさないような自然効果が働く。
声が出るまでは、この状態を維持する必要があるから、筋肉の圧縮感を当然感じるはずだよね」
B「という事は、腹式で息を吸い込んだ時は、筋肉は収縮しているのよね。その時お腹がせり出すのは、胸部の膨張で押された結果なのね」
N「その通り!正しい腹式動作の仕組みが分かりかけて来たかな。
ついでに付け加えると、収縮した筋肉細胞の一個一個が筋肉の弾性反発力を秘めているから、発声時、有効に活用する事を忘れないでね」
B「胸部の領域と腹部の領域の境目が横隔膜なんでしょ。横隔膜が重要な役目持っていそうね」
N「そうだね。横隔膜は腹部球体の上部と見なせるから吐く息のきっかけを横隔膜に働きかけるのは問題ない。
キーのコントロールにも使える部分だから練習効果が期待されるエリアだと思っていいよ。
横隔膜の張りの強さと背骨との位置関係を関連付けて練習課題にするとハイトーンのきっかけをつかめるかもね。
最も重要なのは、強い吸い込みに慣れる事で強い風を思いのままに発生させる技術を完成させておく事かな
。
いよいよ9合目の激しさ厳しくなって来たけど、柔らかく受け流すゆとり感覚が鍛えられるぞ」