ボイトレ山9合目キャンプ第5話

ボイトレ山9合目キャンプ第5

 

 前回は少し休憩を挟みながらだったけど、舌の脱力の難しさや、舌が息の出入口にある事が何となく分かって来たんじゃないかな?

 のど・舌・鼻腔・・・等を頭蓋骨内に付属するものと考えれば、9合目から頂上に相当するエリアとなるよね。ボイトレ山では登頂間近の最重要ポイントとなるから見過ごすわけには行かない。

 頂上を突き抜けて発する火山の噴火轟音と同じで、ボイトレ発声も頭頂部から突き抜けるイメージを持っておくといいかもね。この様に頭を音源として意識すると自然に頭声の雰囲気が漂い始め、ボイトレの完成度が高くなるよ。

 

 今回は頭声を如何に作り上げるかを登頂課題としてゆっくり登り始めてみよう。

 

N「ボイトレ山は頭部と胴体部で形成されていると考えて、雪だるまをイメージすると、登頂の現在地がはっきり見えてくるぞ。ちなみに、数学ではトポロジー(位相幾何学)の領域だけど、頭部と胴体部は縮尺を伴った鏡面関係にあると考えると分かり易いかな」

 

B「私が胴体部の球体だとすると、鏡の中は頭部の球体という事ね。しかも頭部球体は胴体部球体の5分の1くらいと思う訳ね」

 

N「よく整理できたね。腹式呼吸だから胴体部の大きな球体が息のコントロールをするよね。小さな頭部球体は腹式呼吸による腹部振動を受け取るだけのイメージだよね」

 

B「そうすると頭部球体の振動は、腹式振動を待ち伏せしていればいい訳ね。待ち伏せする意識なんて今まで考えたこと無かったわ」

 

N9合目の外気を一緒に振動させてやる感じで練習するとそれ程難しくはない。ただし腹式呼吸がしっかり出来ている事が大前提だね」

 

B「私まだ腹式呼吸、未完成なのよね。ハイトーンが楽に出せないのは、腹式呼吸未完成の証拠なのよね。ハイトーンの腹式コントロール練習に励むわ」

 

N「頭声の練習をしながら腹式呼吸の練習を一緒にやると、登頂がもっと面白くなるかもね。どちらも脱力練習も兼ねるから足取りも軽くなるぞ。

 筋肉依存の実世界から抜け出して息依存の幽玄世界の住人になって欲しい。

 但し、幽玄住民は筋肉住民を奴隷のようにこき使うから、筋肉君は時折悲鳴を上げる程きつい締め付け拷問を受けるからそのつもりでね」

 

B「息を吸うと、息は胸部に移動するのよね。その時、腹部に残存している気体成分は真空状態に近づくのよね。その真空状態が筋肉を引き込んで、お尻などの筋肉が「ぎゅっと」しまるんでしょ」

 

N「その通り!吸気のパワーの見せ所が腹式呼吸でなければ発揮できない事が、じわーっと体感し始めたかな?吸気は真空化という裏技を隠し持っているので想像以上のパワーが湧き出すのでお楽しみにね。

 山岳9合目・ボイトレ山9合目・高年齢9合目・・・にかかると、例外なくスリルある場面に出くわすから、退屈しないワクワクした時間に包まれるぞ。のんびりする暇はないからな」

 

B「私、のんびりの方が好きだけど人生最後のスリルと思って、からかってやってもいいわ」